「日本の若者のPC離れ」は本当か?

小学1年生からプログラミングを学べる学校があるエストニア

最近になって日本でもよく知られるようになったとおり、エストニアはITの奨励を国家戦略としている国です。エストニアの政府機能は高度なレベルで電子化されており、ほとんどすべての行政手続がオンラインで可能です。また Skype を開発するなど情報技術産業の発展に特別に力を入れていることでも知られています。

先鋭的なIT化にともない、国民のほうも一定水準のITスキルを求められる場面が多くなっています。今後もITの重要性は増していくばかりでしょうから、エストニア政府は学校現場におけるIT教育にも力を入れています。

「エストニアには小学1年生から授業でプログラミングを教える学校がある」という報道を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

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一方で、日本では「若者のPC離れ」というのが話題になっているようです。先日もツイッターで次のようなまとめがシェアされていました。

togetter.com

国際的な統計を見る限り、若者のPC利用環境についてはやはりエストニアと日本では顕著な差があるみたいです。グラフを作ってみました。

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注:World Values Survey Wave 6 のデータを元に作成

2010年前後の調査という古いデータを元に作成してみたグラフですが、この時点でもエストニアでは「パソコンを頻繁に使う」と答えた若者は9割近くにのぼる一方、日本の若者は6割弱となっています。約1割の日本の若者はパソコンを「全く使わない」と回答し、この数字はエストニアの若者の5倍以上です。

PC所有率の低さが原因?

舞田敏彦氏は、日本の若者のPCスキルの低さの原因として「教育のICT化の遅れ」とともに「そもそも日本の若者のPC所持率が他の先進国と比べて低い」ことをあげています。

www.news-postseven.com

こちらも古いデータを元にしたものですが、「どうやら日本の児童は他のOECD諸国に比べて(PCに限らず)学用品に恵まれない子どもが多いらしい」という結果が出ております。

以下の学用品8品目のうち、4品目未満しか与えられていない15歳の子どもの割合(千分率)

(1)学習机 (2)静かに勉強できる場所 (3)勉強用のパソコン (4)勉強に使うソフトウェア (5)インターネット (6)計算機 (7)辞書 (8)教科書

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注:グラフは OECD (2009). Doing better for children. Chapter 2, Comparative Child Well-being across the OECD より引用(※リンク先PDFファイル

日本では「4品目未満しか与えられていない子ども」が5.6パーセント存在し、OECD平均よりはるかに高く、また調査参加国の中でも低水準に位置します。日本の家庭は児童に適切な学用品を与えることを重視しない傾向にあるのかもしれませんね。となると「いまどき子どもの教育にPCは必須!」と考える親もヨーロッパに比べて少ないのかも。

というわけで、各種データを見る限りは「日本の若者が諸外国に比べてPCを使わない」「そもそも自分のPCを持っていない人が多い」というのは事実のようですね。

日本の教育格差 (岩波新書)

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